胡蝶蘭の花が終わったら?もう一度咲かせる二度咲きの手順と時期
「花が終わってしまったんですが、これって捨てるしかないですよね?」
胡蝶蘭卸売会社「オーキッドワールド」代表の橘凛音です。
取引先からいちばん多くいただく質問が、これなんです。
答えははっきりしています。
株が元気なら、来年もう一度咲きます。
しかも、花が全部落ちきるのを待たずに切るのがコツです。
特別な設備は要りません。
ご自宅の窓辺で十分です。
切る位置から植え替え、花芽が上がるまでの流れを順にお伝えします。
花が終わった胡蝶蘭は、捨てる前に二度咲きが狙えます
花が2〜3輪残っているうちが分かれ道です
胡蝶蘭は、花が散ったからといって寿命が尽きたわけではありません。
花茎が枯れただけで、株そのものはまだ元気に生きています。
実際、うちの温室にいる株の多くは、何度も花を咲かせながら10年近く現役です。
ここで大事なのが切るタイミング。
花が全部落ちてカラカラになった花茎からは、新しい芽はほとんど出てきません。
花茎にまだエネルギーが残っている、2〜3輪咲いているうちに切ってしまうほうが、次の芽は動きやすくなります。
「もったいないから最後の一輪まで飾りたい」というお気持ちはよく分かるのですが、来年また咲かせたいなら、少し早めに手を入れてください。
二度咲きを狙うか、株を休ませるかを先に決めます
すべての株が二度咲きに向いているわけではありません。
判断材料は、葉と根です。
- 葉が肉厚でハリがあり、4枚以上ついている株は二度咲きを狙えます
- 葉がペラペラ、シワが寄っている株は体力不足なので休ませます
- 鉢を持ち上げたときにずっしり重い株は、根がしっかり残っています
体力のない株に無理やり花を咲かせると、翌年まったく咲かなくなることがあります。
迷ったら、花茎を根元から切って株を休ませるほうが確実です。
その年は花を諦めることになりますが、翌春に立派な花茎が上がってきます。
見分けがつかないときは、いただいてからどれくらい飾っていたかを思い出してみてください。
届いてから3か月近く咲き続けた株は、それだけ体力を使っています。
逆に、1か月ほどで花が落ちた株は消耗が少ないので、二度咲きに向いています。
花茎はどこで切る?節の数え方と切り方
根元から2〜3節を残して切ります
花茎をよく見ると、竹のように少し膨らんだ「節」が等間隔で並んでいます。
この節から新しい芽が出るので、節を残さずに切ってしまうと二度咲きは望めません。
NHK出版のみんなの趣味の園芸でも、蕾の半分ほどが咲き終わったら下から2〜3節を残して切ると、残った節からまた花芽が伸びると紹介されています。
私も同じで、株元から数えて3番目の節の、1cmから2cmほど上でカットしています。
節そのものを傷つけないよう、少し余裕を持たせるのがポイントです。
ハサミは火であぶってから使ってください
胡蝶蘭の切り口は、細菌が入るとそこから傷んでしまいます。
使うハサミは、ライターの火で刃先を軽くあぶるか、消毒用アルコールで拭いてから使ってください。
複数の株を切るときは、1株ごとに消毒します。
面倒に感じるかもしれませんが、ここを飛ばしてウイルス病を株から株へ広げてしまう例を、私は業界で何度も見てきました。
切り口は斜めにすると水が溜まりにくく、傷みにくくなります。
ラッピングと支柱も外します
贈答用の胡蝶蘭は、鉢がセロファンやリボンで包まれたままのことが多いです。
あの状態は蒸れて根腐れの原因になるので、飾り終わったら必ず外してください。
花茎を支えていた支柱とクリップも、このタイミングで抜いておきます。
新しい花芽が伸びるときに支柱が邪魔になり、芽が曲がってしまうことがあるからです。
なお、贈答用の3本立ちは、3株を1つの鉢にまとめて入れている「寄せ植え」がほとんど。
株ごとに元気さが違うので、切るときも1株ずつ状態を見てあげてください。
切ったあとの温度と水やりで結果が決まります
18℃を切らせないことが最優先です
胡蝶蘭はもともと熱帯育ちの植物で、寒さに当たると一気に動かなくなります。
みんなの趣味の園芸のコチョウランは温度で育てるでは、覚えておきたい温度が3つ挙げられています。
| 温度 | 株に起きること |
|---|---|
| 18℃以上 | 一年を通して順調に育ち、花芽ができる最適温度 |
| 15℃以上 | 花茎の伸びはゆっくりだが、2月から4月に開花する |
| 7℃以下 | 根の先端の細胞分裂が止まり、活動が完全に停止する |
置き場所は、レースのカーテン越しの窓辺が定番です。
ただし冬の夜は窓際の温度が驚くほど下がるので、夜だけ部屋の中央へ移動させてください。
エアコンの風が直接当たる場所も避けます。
水は「乾いてから」。冬は月1回でも足ります
二度咲きを失敗させる原因で、いちばん多いのが水のやりすぎです。
胡蝶蘭の根は空気を好むので、常に湿っていると呼吸できずに腐ります。
ハイポネックスのコチョウランの育て方では、植え込み材ごとの目安がこう示されています。
| 季節 | 水苔植え | バーク植え |
|---|---|---|
| 春・秋 | 10日から2週間に1回 | 1週間から10日に1回 |
| 夏 | 週1回 | 4日から5日に1回 |
| 冬 | 月1回程度 | 2週間から3週間に1回 |
水苔に割り箸を差し込んで、抜いたときに湿っていなければ与えどきです。
与えるときは鉢底から流れ出るまでたっぷりと。
受け皿に溜まった水は、必ず捨ててください。
冬場は冷たい水がこたえるので、室温に戻した水を午前中に与えます。
肥料は春になってから
花芽を待っている冬のあいだ、肥料は要りません。
根が動いていない時期に与えても吸収されず、かえって根を傷めます。
施すのは春から夏のあいだだけ。
洋ラン用の液体肥料を規定倍率に薄めて、週1回、水やり代わりに与えます。
秋になったら止めます。
5月から6月は植え替えの適期です
2年に1度は植え込み材を替えます
水苔もバークも、時間が経つと分解して水はけが悪くなります。
古いまま使い続けると、水やりの量が適切でも根が腐ります。
適期は、最低気温が15℃以上で安定する5月上旬から6月下旬。
花が終わって、これから夏の生育期に入る手前のタイミングです。
2年に1回を目安にしてください。
初心者の方には、水苔と素焼き鉢の組み合わせをおすすめしています。
乾き具合が鉢の色で分かるので、水やりのタイミングを外しにくいからです。
植え替えのあと1週間は水をやりません
植え替えでは、どうしても根に細かい傷がつきます。
そこへすぐ水を与えると、傷口から雑菌が入って根腐れを起こします。
バーク植えなら1週間、水苔植えなら2週間ほど水やりを控えてください。
その後、少量から再開して、徐々に通常の間隔に戻します。
「かわいそう」と思って早めに水をあげたくなるのですが、ここは我慢のしどころです。
白い根は元気な証拠です
植え替えのとき、根の色に驚く方がいます。
胡蝶蘭の根は表面が白から銀色をしていて、水を吸うと緑に変わります。
これは根を守る組織の色なので、白くても心配は要りません。
抜くべきなのは、黒っぽく変色して指で触るとつぶれる根、中身がスカスカになった根です。
消毒したハサミで、そうした根だけを切り落とします。
健康な根まで整理してしまうと、株の体力が落ちます。
花芽が上がるまでの流れと、つまずきやすいところ
芽が動くまで1か月、開花までさらに数か月かかります
切ってすぐ何かが起きるわけではありません。
うちの温室でも、切った節から芽が動きはじめるまでにひと月前後。
そこから花が開くまで、さらに3か月から4か月はかかります。
つまり、春に切った株が咲くのは秋か冬です。
この待ち時間を知らずに「1か月経っても変化がない」と諦めてしまう方が、本当に多い。
鉢の見た目が変わらなくても、株の中では根が伸びています。
花芽と根は、伸びる向きで見分けます
節から出てきたものが花芽なのか根なのか、最初は見分けがつきません。
上に向かって伸び、先端がとがっているものが花芽です。
横や下へ向かい、先端が丸みを帯びているものは根になります。
花芽だと分かったら、支柱を立てて添わせてあげてください。
支柱は、花芽が20cmほど伸びてからで十分間に合います。
早いうちからクリップで留めると、伸びる途中で茎を折ってしまいます。
ちなみに、花芽が出はじめたら鉢の向きは変えないでください。
胡蝶蘭の花は光のほうを向いて咲くので、途中で回すと花の向きがばらばらになります。
うまくいかない原因は、たいてい温度か水です
二度咲きしなかったという相談をいただくと、原因はほぼこの2つに絞られます。
冬に室温が下がりすぎたか、水をやりすぎたか。
置き場所の温度が18℃を下回っていないか、まず確かめてみてください。
夜間だけ10℃近くまで落ちる部屋は、意外とあります。
そのうえで植え込み材を触ってみて、いつも湿っているようなら水の間隔を空けます。
これでも花芽が出ないときは、株が休みたがっているサインです。
その年は葉を育てることに専念させて、翌年に期待しましょう。
まとめ
花が終わった胡蝶蘭を捨ててしまうのは、正直もったいないと思っています。
やることは、花が2〜3輪残っているうちに根元から2〜3節を残して切り、18℃を保った明るい日陰で、乾いてから水をやる。
これだけです。
すぐに変化がなくても、株の中では次の準備が進んでいます。
いただいた花をもう一度咲かせられたときの嬉しさは、買った花では味わえません。
あなたのお部屋の胡蝶蘭も、まだ終わっていないかもしれませんよ。